○豊丘村農業・農山村振興条例

令和5年3月20日

条例第5号

(前文)

本村の農業及び農山村は、生命の源となる農林産物を生産し、本村や地域の食の供給に重要な役割を果たし、本村の産業、経済を支えてきた。そこでは、豊かな自然と共生し、四季折々の美しい景観を守りながら、果樹・野菜・米や畜産などの収益性の高い農畜産物を高品質に生産する技術を向上させてきた。また、村木の赤松の山林からは品質、量とも日本一とうたわれる松茸が収穫され、本村にとってかけがえのない財産である。

しかしながら、近年では、農産物価格の低迷や生産コストの上昇による農業所得の減少、農業生産基盤の老朽化など、農業経営を取り巻く環境は厳しさを増している。加えて、農業従事者の高齢化、後継者不足、遊休農地の増加、野生鳥獣による被害の拡大などにより、農業経営や技術の伝承はもとより、農山村の存続までもが危ぶまれている。

他方では、食の安全や自然環境の保全に対する国民の関心は高まっており、有機野菜をはじめとする付加価値の高い農産物の需要の拡大、環境と調和し、持続的な発展を目指す農業生産基盤の再整備など、農業のあり方は転換期を迎えている。同時に、農山村は国土や自然環境の保全など多面的な機能を有しており、国民生活に果たす役割の重要性も見つめ直されている。

こうした状況に鑑み、より安全で安心な農産物が安定的に生産・供給され、本村の財産である農業及び農山村が将来にわたって持続されるよう、農業者のみならず全ての村民がその重要性を認識し、村・農業者・農業団体・事業者及び村民が協働して、農業を本村の基幹産業として育みながら、魅力ある農業及び農山村の進むべき道を明らかにするため、本条例を制定する。

(目的)

第1条 この条例は、農業及び農山村が有する多面的な機能の恩恵を広く国民が享受していることや、生命の源となる農林産物を生産し、本村や地域の食の供給に重要な役割を果たしていることに鑑み、農業及び農山村に関する施策の基本理念を定め、村、農業者、農業団体、事業者及び村民の責務と役割を明らかにするとともに、農業及び農山村に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、持続的な発展と健康で豊かな村民生活の実現に寄与することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) 農業者 農業を営む個人及び法人その他の団体をいう。

(2) 農業団体 農業協同組合、農業共済組合及び土地改良区その他の農業関係団体をいう。

(3) 事業者 農林産物を利用した事業又は農林産物の販売等を行う事業を営む個人及び法人その他の団体をいう。

(4) 地産地消 地域で生産された農林産物を、その地域で消費し、利用することをいう。

(5) 多面的機能 国土の保全、水源の涵養、良好な景観の形成、文化の伝承等、農山村で農業生産活動が行われることにより生ずる、農林産物の供給の機能以外の多面にわたる機能をいう。

(6) 食 食べること及び食料、食生活、食文化その他の食べることに関連する事項をいう。

(基本理念)

第3条 農業は、本村の特性を活用した収益性の高い、安定的な農業経営が確立されるとともに、多様な主体が農業の担い手として確保され、将来にわたって農業が持続的に営まれるよう、その振興を図るものとする。また、自然環境に調和した、より安全で安心な農林産物が安定的に生産・供給されるよう、農業の健全な発展を図るものとする。

2 農山村は、農林業、生活、地域コミュニティなどを持続的に発展させる基盤であり、農業及び農山村の有する多面的機能が村民共有の財産であることを認識し、その機能が将来にわたって適切かつ十分に発揮されるよう、その振興を図るものとする。

3 食は、健康で豊かな生活を支えるものであることに鑑み、食の重要性に対する村民の理解と関心を深め、本村や地域で生産・供給される農林産物の地産地消を促進するとともに、地域特有の食文化の継承を図るものとする。

(村の責務)

第4条 村は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、農業及び農山村の振興に関する総合的な施策を策定し、計画的に実施するものとする。

2 村は、前項の施策の策定及び実施に当たっては、国、県その他の関係機関と連携を図るとともに、農業者、農業団体、事業者及び村民の意見を反映するよう努めるものとする。

(農業者の責務)

第5条 農業者は、基本理念にのっとり、農地を適正に維持管理し、より安全で安心な農林産物を供給するとともに、自らが主体となって農山村における地域づくりを実践することにより、農業及び農山村の振興に取り組むよう努めるものとする。

(農業団体の責務)

第6条 農業団体は、基本理念にのっとり、農業者に必要な農業に関する情報の提供を行うとともに、農業者の生活及び農業技術の向上その他の農業を営むための環境整備を行うことにより、農業及び農山村の振興に取り組むよう努めるものとする。

(事業者の役割)

第7条 事業者は、その事業活動を行うに当たっては、基本理念にのっとり、地産地消を通じて、農業及び農山村の振興に取り組むよう努めるものとする。

(村民の役割)

第8条 村民は、基本理念にのっとり、農業及び農山村が有する多面的機能の重要性について理解と関心を増進し、次代の社会を担う世代に継承するよう努めるものとする。

2 村民は、本村や地域で生産される農林産物の消費の増進に努めるとともに、農業への参画及び農業者との協働等地域活動を通じ、農業及び農山村の振興に協力するよう努めるものとする。

(施策の基本方針)

第9条 村は、基本理念にのっとり、次に掲げる事項を、農業及び農山村の基本的な施策(以下「基本方針」という。)として、各々の施策相互の有機的な連携を図りつつ、総合的かつ計画的に推進するものとする。

(1) 農業の多様な担い手の確保及び育成を図る。

(2) 農林産物及び加工品の高付加価値化により、地域ブランドを確立させ、収益性の高い農業経営の確立と競争力のある産地の育成を図る。

(3) 農業経営の改善・発展を支援し、意欲ある農業者の育成及び確保を図る。

(4) 農業及び農山村が有する多面的機能の保全及び発揮を図る。

(5) 農業生産基盤及び農山村の生活環境等の整備及び維持を図る。

(6) 優良農地を保全し、農地の有効利用を図るとともに、遊休農地の発生防止と解消を図る

(7) 有害鳥獣被害の防止及び被害対策への支援を図る。

(8) 農業、商業、工業等との連携による、農業を核とした地域産業の創出を図る。

(9) より安全で安心な農産物を安定的に生産及び供給する体制の構築を図る。

(10) 村民の農と食に対する理解を増進し、本村や地域で生産される農林産物の消費の増進を図る。

(11) 農薬及び肥料の適正な使用や有機物資源の有効利用による土づくり等に基づく、有機農業をはじめとした環境保全型農業の推進を図る。

(12) その他、農業及び農山村の振興に必要な施策の推進を図る。

(基本計画)

第10条 村は、前条に規定する基本方針に基づき、施策を総合的かつ計画的に推進するため、農業及び農山村の振興に関する計画(以下「基本計画」という。)を策定するものとする。

2 村は、基本計画の策定に当たっては、農業者、農業団体、事業者及び村民の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとする。

3 村は、基本計画を定めたときは、これを公表しなければならない。

4 村は、第1項の規定により策定した基本計画について、必要に応じ見直しを行うものとする。

5 第2項及び第3項の規定は、基本計画の見直しについて準用する。

(豊丘村農業・農山村振興懇談会)

第11条 農業及び農山村の振興に関する施策の推進について、調査し、意見を求めるため、豊丘村農業・農山村振興懇談会(以下「懇談会」という。)を置く。

2 懇談会は、村長の諮問に応じ、次に掲げる事項を調査検討する。

(1) 基本計画の策定及び見直し等に関すること。

(2) 施策の提言及び実施状況等に関すること。

(3) 前号に掲げるもののほか、農業及び農山村の振興に関する重要な事項。

3 懇談会は、毎年開催する。

(議会への報告)

第12条 村長は、基本計画の策定又は見直しを行ったときは、議会に報告しなければならない。

2 村長は、前項のほか、基本計画に基づく施策の実施状況等に関し、適時に、議会に報告しなければならない。

(委任)

第13条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、村長が別に定める。

この条例は、公布の日から施行する。

豊丘村農業・農山村振興条例

令和5年3月20日 条例第5号

(令和5年3月20日施行)